2011/10/02

おばあちゃん3

9月の三連休にいったときのことを書いておこうと思う。

高栄養の点滴に変えたのがよかったらしく、酸素、体温、血圧ともに良好。むくみもだいぶ引いていた。呼吸もくるしそうではない。夜中、眠れずにベッドの柵に手をかけておき上がりたいような、上半身を浮かすようなそぶりをみせる。はらはらしたけど、私は眠った。
おそらく、体位変換、おむつ交換をしてもらえなかったために不快なのではないかと思った。ごめん、おばあちゃん、私にはできない、し、看護婦さんが来た時にはおばあちゃん眠ってたから看護婦さんはおこしちゃいけないと思って多分おむつ交換しなかったんだと思う。こういうの、何が一番かわからない。
それで、私は罪悪感とともに眠った。

朝、6時くらいに来てくれた看護婦さんがおむつ交換と体位変換をしてくれた。気持ちよくなったのか、それから寝始めた。
病室は東側に窓があり、海から登る朝日がいつでもきれいだ。
私も二度寝にはいった。
8時前にやっと起きて、おばあちゃんの様子をみたり、着替えたりする。
9時に看護婦さんがやってきて顔を拭いたり痰をとったりしてくれる。
看護婦さんがいったあとが、朝のエステタイム。暖かいタオルで顔をおおったり、首筋を暖めたり、気持ちいいと思うからやるんだけど、おばあちゃんは意外と嫌な顔する。眉間に皺をよせる。いやなのかなあ。あと、手足を暖めてマッサージをする。
それでだいたい11時くらいになる。

おばちゃんから電話がかかってきた。
夜ごはんにつれていけないから昼ごはんに外食しようという。かなちゃんの好きそうな店だよ、ママもこないだ連れてったら気に入ってたよ。と。

妙生庵という民家を改造したとてもすてきなカレーやさんだった。スロースード、エコ、ベジタリアン、というキーワードの似合いそうな。豆のカレーと、ナッツのぎっしり詰まったケーキとコーヒーをいただいた。
稲刈り中の田んぼの見える二階の席だった。正月館(うちの屋号)の稲刈りは先週、台風の前日に終わったという。台風の前と後では収穫量が大分違うから本当によかったねと話した。

13時半くらいには病院へ戻って、またベッドに登って足マッサージなどした。おばあちゃんは起きたり眠ったり。
二日目だったので身体がなまってしまって、お散歩にいきたいな、おばあちゃんが眠ったらいこうかなって様子をうかがっててもなかなか眠らないので、
「おばあちゃん、私、お散歩にいってきていい?このマッサージおわったら行って来てもいい?」ときいたら、うなずいた(ように見えた)。その後マッサージしてると「早くいけっちゃ」といったのか?わからないけどそう聞こえたので、「じゃあ行ってくるね、すぐ戻るからね」といってでた。病院の横に鳥居があってその神社がずっと気になってたのだ。神社は草ぼうぼうで静かだった。ご挨拶して、ストレッチして、となりの公園にあるブランコでしばらくあそんだ。五時半に戻った。

それからまた手を握ったりおばあちゃんの顔の側で歌を歌ったりしてみた。大声じゃなくてもきっと聞こえるとおもって小さい声でうたったけど、どうだったかなあ。
だいたいおばあちゃんも私も共通してしってる歌なんてあるのかわからない。私の持ち歌(童謡)はおばあちゃん、知ってるのだろうか?わからないけれども、海にまつわる歌、ヤシの実とか海はひろいなとか、思いつくままに歌った。おばあちゃんは特に反応しなかった。上を向いて歩こうを歌いだしたら、私は涙がでてきてしまった。おばあちゃんを思ってか、自分を思ってか、あの歌は涙を誘う音階だからか。
それから、おばあちゃん、ありがとね、だいすきだよ、といった。
多分、聞いてくれたと思う。

夜になってカーテンの隙間から星がきれいに見えたので23時頃、おばあちゃんが一瞬ねむった隙に外へでた。満天の星空だった。流れ星、ちいさいの2つと、中くらいの3つ見た。天の川がかかっていた。くらい道ばたに体育すわりして、両側から虫の音にはさまれて見上げた。

その夜もおばあちゃんはあまり眠れなかった。
同じように、朝になって眠り始めた。
11時半におじちゃんが迎えにくるまでさすったりマッサージしながら、病室を掃除して(その夜は母がくることになっていた)清潔にして部屋をあとにした。

おばあちゃんの顔をずっとみてると、本当に美しくて、つぶったまぶたによった細い細い皺が本当に美しくて、私はこの美しさを覚えていたいと思った。細い面相筆じゃないとかけないような皺。顔の皮膚がうすくてつやつやで、細部まできれい。この人はきっとしあわせだったと思える。
ほとんどしゃべることも声をだすこともできないけれども、ときたまうれしそうに笑う時の顔が、昔と全くかわらない。びっくりしたように目を一度みひらき、口もとが笑う。